新年の御挨拶(松居臨時代理大使)

平成31年1月11日
新年明けましておめでとうございます。
 
 このたび、国際民間航空機関(ICAO)日本政府代表部は、新年から独立した在外公館として発足し、オタワの石兼公博駐カナダ大使に代わって業務を開始いたしました。この節目に、このホームページをご覧いただいた皆様へ臨時代理大使としてご挨拶申し上げます。
 
 着任時のご挨拶でも触れましたが、振り返れば、1953年にICAOに加盟した日本は、1956年以降その主要な理事国として航空による戦後の国造りと国際民間航空の安全で秩序ある発展に注力してまいりました。 
 
 その間、日本は、関係省庁、代表部、航空産業界や研究機関の先達の内外の知見と経験、開発された技術に基づいて積み重ねられた努力の礎の上に、航空安全等の国際標準の決定というICAOの中心的な取組や航空テロへの対応などに積極的に参画することを通じ、国益の最大限の実現を図ってまいりました。
 
 最近では、予断を許さない国際情勢の中、航空安全を脅かす北朝鮮の行動に対するICAOの緊急対応における国際ルールの遵守のための意思決定と関連の外交努力を日本が関係国と連携して主導してきております。また昨年は、日本の航空専門家の方々に、ミャンマー、カンボジア、バングラデシュ及びアフガニスタンの各当局のICAOの環境対策の実施能力を向上させる技術協力のため、世界各地で活躍していただきました。
 
 併せてICAO内部では、2017年には代表部職員(国土交通省から出向)が日本人で初めて航空委員会議長を務め、2018年からは私自身、理事会第三副議長を務めることで、代表部としても日本の存在感と影響力をできる限り高められるよう取り組んでおります。
 
 特に本年は、ICAOを発足させたシカゴ条約の採択から75周年にあたります。3年に一度開催される9月の総会への日本の貢献と国益の実現に向けては、政府内はもとより日本の航空関連企業や研究機関の皆様から御意見や御協力を頂きながら、新代表部一丸となって力を尽くしてまいります。ビジネス促進の場としての活用、ICAO事務局への職員派遣に関する御関心、御相談などございましたら、代表部(Eメール:japan@icao.int)までお寄せください。
 
 最後に、ICAOは、航空や外交の専門家のみならず、法務、財務、人事、監査、ICTに至るまで有為の若手日本人の様々な能力や日本人ならではの貢献を必要としています。この関連で、そもそも航空秩序の国家間の土台を黒子のように支えるICAOの役割は、飛行の安全が保たれる限り、一般にはあまり知られていないかもしれません。しかし、私自身、元々航空の専門家ではありませんが、ICAOの取り組むグローバルな課題から世界を眺めるうちに、今ではICAOの仕事の重みと魅力がはっきりと見えています。
 
 その課題とは、昨年外国からの訪日客が3000万人を越え、日本の空港では毎日約700便の国際定期便が発着し、日本では2020年に東京五輪•パラリンピックが開かれ、世界では乗客・貨物を合わせ世界の民間航空運送量は2032年までに倍増すると見込まれる中で、そうした未来を見据えて、国際民間航空運送の安全、安心、経済面・環境面の効率を技術的、政策的、法制的にどのようにバランスよく高め、各国の実施を通じ、ヒト、モノ、サービスの流れを支える空の基盤の持続可能な発展に導いていけるかという地球市民全体への問いかけと言えましょう。
 
 当代表部は、以上のように、空の渡航の安全・安心の基準の設計士であり、番人であり、実践の助っ人でもあるICAOの仕事の魅力を一人でも多くの方に知っていただけるよう活動してまいります。また、将来ICAO事務局で働きたいという日本の皆様、空席に応募した方々をサポートさせていただきますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
 
平成31年1月
 



松居臨時代理大使略歴

  ● 2016年8月にICAO日本政府代表部着任。現在、臨時代理大使、理事会日本政府代表、理事会第三副議長を務める。
  ● 1989年外務省入省。California Western School of Lawで修士号取得後、ワシントンDCの日本国大使館勤務。
  ● ジュネーブ(UNHCR担当)、ウィーン(IAEA法務部へ派遣)、本省(専門機関室)などで国連関係機関との外交に携わる。
  ● 9.11 米国同時多発テロ対応、3.11東日本大震災後の原発事故に伴うIAEAの福島県内の活動への同行も経験。
          前職は欧州連合経済室長。京都市出身。